企業内学習の成果として何らかの対価を用意すべきだと一般的には思われている。
例えばある技能を身につけたら給料が上がる。ある知識を身につけたら報酬が出る。ある資格を取ったら賞与が上がる。
これらは非常に上手くいきそうだ。人間は報酬があったほうが頑張るというのは明らかな事実のように思える。
しかし、実は、これ以上に成果が出る方法があるとしたら、あなたはどうするだろうか?
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ハリー・ハーロウの実験
ある実験がある。
ウィスコンシン大学教授のハリー・ハーロウが20世紀半ばに行った実験だ。ベストセラーになったモチベーション3.0でも紹介されているので、ご存知の方も多いかと思う。
実験は次のようなものだった。
- 3段階に渡る工程を経て開く仕掛けがある
- サルの檻の中に、この仕掛けを入れる
- サルたちの問題解決能力を見る
という単純な実験だった。しかし、実験結果は単純にならなかった。
報酬がなくても勝手に解決をしはじめた
サルたちは報酬がなくても勝手に問題を解決し始めた。それも何度も、何度も。
その結果として、仕掛けを解くスピードは急激に早くなり、2週間も経つと1分以内という驚くような速度で仕組みを解くようになった。
これは少々不思議な話だ。
基本的に報酬が与えられる結果、もしくは罰が与えらないようにする結果として動物は働くと思われている。ロバに人参をぶら下げるのと同じだ。しかし、この実験はまったく違う結果を出した。
加えて不思議なことが起こった
これだけの結果であれば、「サルたちが退屈しのぎに練習をしてうまくなったんだろう。遊び感覚だ」となって理解もできる。
しかし、さらに不思議な結果が起きた。
実際に報酬を与える実験をしてみたところ、「報酬を与えた方が、成功率がずっと低かった」のだ。
報酬を与えるよりも、自由に勝手にやらせた方が成果が良かった、というマネジメント信望者にとって非常に素敵ではない結果が出てきたのだ。
内的動機付けは強力だ
このサルたちのように勝手に自ら成長していくことを内的動機付けによる成長という風に呼ぶが、これが非常に強力だという証拠を示した実験だ。
課題を解決することそのものが内発的報酬になったのである。
当初この実験と結果はまったく認められなかった。しかし今では数々の実験結果から一般的と言えるまでの考え方になっている。
人間は報酬が与えられるとそこまでしか頑張らない
人間は報酬が与えられるとそこまでしか頑張らない。
文化祭
ものすごい熱量で文化祭を作り上げていく高校生を思い浮かべてみよう。彼らの時給500円を提示したらどうなるだろうか? きっと熱は冷めて、「なんでこんなに安い時給で働かないといけないんだ。バイトしていたほうがマシだ」となるはずだ。
これが報酬のマイナス作用だ。
内的動機付けで働いている方が明らかに頑張って成長していく。
限界を見せずに成長をしていくのだ。
ボランティアが驚くほど力を発揮する
ものすごい熱量で働いているボランティアにもよく出会う。彼らにも同じように内的動機付けがあり、圧倒的な速度感で働いているのだ。
とある著名なセミナー講師は、
「スタッフはボランティアで集めるに限る。彼らの方が報酬で働くワーカーよりもよく働いてくれる。ボランティアの彼らには、報酬ではなく機会や成長の場で報いるようにしている」
と話している。
実際、そちらの方が熱心に働いてくれ、セミナー全体の評判もまったく違ったものになったという。
まとめ
報酬に対する学習が限定的だという事実がここにある。
その状況下で、
- ある技能を身につけたら給料が上がる
- ある知識を身につけたら報酬が出る
- ある資格を取ったら賞与が上がる
という制度を組むのは正しい対応なのだろうか?
確かに内的動機付けを呼び出すのは大変だ。そんなことができるならもうやっているという声も聞こえそうだ。
しかし、一度考えて見る価値はあるのではないだろうか?