近年、飲食業で人材不足が嘆かれており、若くして店舗運営を任される人も増えている。
飲食業界は、ここ数年で6万店が生まれる一方、5万店が消えているほど過酷な世界だ。
では、生き残っている1万店は他と何が違うのだろうか。
その違いは、「数字管理の徹底」、「魅力的で分かりやすいコンセプト」、「採用活動の成功」の3つが実践されているかどうかだ。
このページでは、店長が知っておくべき「数字管理」についてまとめている。
初めて店舗を任された店長や、これから新たに店舗運営を任せようとしている管理部門や育成担当者はぜひ参考にしてほしい。
Contents
数字で儲かっている店舗を把握する
以下の例で、どちらの店舗が儲かっているかを考えてほしい。
売上額と利益額
ある場所にA店とB店があるとする。
【A店】投資2000万円、年間売上4000万円、利益700万円
【B店】投資5000万円、年間売上8000万円、利益1000万円
この数字を見てみると、B店が儲かっているように見えるが、実際そうだろうか?
利回り
利回りを計算してみると、
【A店】2000万円投資をして700万円の利益を出している
・・・利益700万 ÷ 投資2000万 = 利回り35%
【B店】5000万円投資をして1000万円の利益を出している
・・・利益1000万 ÷ 投資5000万 = 利回り20%
上記から、B店よりもA店の方が、利益額は少ないが、利回りは高いことがわかる。
投資額の回収
この場合、各店の投資額はどのくらいで回収できるのだろうか。
【A店】利回り35%なので、2.9年で投資を回収できる
【B店】利回り20%なので、5年で投資を回収できる
ここまでくればどちらが儲かっているかわかっていただけるだろう。
数字管理の基本:ROI
上記で説明した数字管理は、ROIというものである。
ROIとは「Return On Investment」の略で、投資収益率のことだ。
費用対効果といったほうがわかりやすいかもしれない。
成功している店舗は、このROIを意識して数字管理を行っている。
営業利益を出せていても、投資した分を回収できなければプラスに転じないからだ。
まずはこの数字管理方法から身につけてほしい。
数字管理の基本:FLコスト
次に把握してほしい数字管理は「FLコスト」である。
FLコストとは、F(フード=原価)+L(レイバー=人件費)のコストを指す。
このFLコストの数字を全コストの60%以内に収めないと利益が出にくいとされている。
ここで注意しなければいけないのは、「60%以内」というところだ。
実はこのFとLのバランスは業態によって異なる。
例えば、ファストフード店のように物販に近づくほどF>Lとなり、接待需要の店や高級業態になるほどF<Lになる。
業態に合わせて計算した上で、60%に収まるか確認することが必要だ。
数字管理の基本:FLRコスト
上記でFLコストについて触れたが、もう一つ考えなければいけない数字がある。
それが家賃だ。
店舗運営は、原価、人件費、家賃の3大コストで収益がほぼ決まってしまう。
そのため、FLコストに家賃(R)を入れた「FLRコスト」を考えなくてはならない。
このFLRコストの数字を、全コストの70%以内に収めることがポイントだ。
数字管理のための客席回転数の把握
数字管理において大事なのはもちろんコストだけではない。
お客様や店舗の現状を反映した数字もとても大事だ。
店内での提供のみを行う飲食店の場合、座席数が限られるため、いきなり通常の2〜3倍の売上を上げることは難しい。
座席数を増やさずに売上を増やすにはどうしたら良いか。
その一つの指標が、客席回転数だ。
客席回転数とは、1席あたり1日何人が利用したのかを把握するものである。
コストに加えて客席回転数も把握した上で、店舗運営を戦略的に行う必要がある。
店長が知っておくべき人件費の決め方
数字管理において気をつけなければならないのは人件費の設定だ。
ほとんどの店舗は、アルバイトやパートの力を借りて店舗運営を行っている。
しかし、人手不足の今、売上と人件費のバランスに困っている店長はとても多い。
適正な人件費は、どのように計算すればいいのか。
その指標となるのが「労働生産性」である。
労働生産性とは、スタッフがどれだけ効率的に稼いでいるかを見る指標のことだ。
粗利益をスタッフ数で割った数が労働生産性となる。
スタッフ1人が新たに生み出した粗利益の金額をもとに、人時売上高(スタッフ一人の一定期間あたりの売上を示す数字)と人時生産性(スタッフ1人の1時間あたりの粗利益を示す数字)を計算し、適正な人件費に抑えることが必要だ。
数字管理で使えるABC手法
あなたは「パレートの法則」というものを聞いたことがあるだろうか。
パレートの法則とは、別名「20:80の原則」とも呼ばれており、「約20%の商品が全体売上の80%をカバーしている」という理論だ。
それを応用したのが「ABC手法」である。
ABC手法では、「20:60:20」という構成比で商品を分ける。
【Aグループ】売上の80%を占める上位20%の商品
【Bグループ】売上の20%を占める60%の商品
【Cグループ】売上が僅かしかない20%の商品
この中のAグループを重点的に管理すれば、売上のほとんどをカバーできる、という管理方法がABC手法である。
このABC手法は、売上管理や顧客管理、在庫管理など、様々な数字管理に応用できるのでぜひ覚えてほしい。
数字管理のための棚卸
棚卸は、在庫の数を把握するために行うと思われがちだが、実はそのためだけではない。
売れ筋ならびに売れ残り商品の把握、破損による損失の把握などのためにも、棚卸はとても重要だ。
年間を通して計画的に仕入れを行い、定期的に棚卸することで、翌年以降にも使えるデータを収集できる。
大変ではあるが、最低でも毎月棚卸を行い、きちんと数字管理していきたい。
顧客データの数字管理を店舗運営に活かす
店舗を運営するには、顧客データはとても重要である。
飲食業のような店舗の場合、顧客別の購買履歴などの詳細データは取りづらい。
しかし、時間帯による客層の違いやよく売れる商品の傾向などを分析し、店舗運営に活かすことは可能だ。
美容院などのサービス業の場合は、初めて来店した際にカウンセリングなどを行うため詳細データを取りやすい。
売れている店舗は、顧客データの数字管理を細部まで行い、数字の変化に対応して売上を伸ばしている。
まとめ
ここまで、店長が知っておくべき数字管理方法を紹介してきた。
実際に店舗運営し、売上を伸ばしていくためには、より細かな部分にも注意した数字管理が必要となる。
ぜひあなたの店舗に合う数字管理方法を見つけて、儲かる店舗を目指してほしい。