業界業種問わず、若手社員にもっと主体的に働いて欲しいと思っている上司は多いだろう。
主体性は、部下に求める能力として常に上位に挙がる必須項目だ。
このページでは、部下の指導に悩みを抱えているマネージャーや人事担当者のために、若手社員の主体性発揮のためのポイントと、主体性を身につけさせる指導方法についてまとめている。
Contents
主体性発揮に必要な「自立」と「自律」
「主体性」とは、自分の意志や判断で行動しようとする態度のことを指す。
会社での定義は、「上司の指示がなくても自ら進んで業務に取り組むこと」だ。
自ら進んで業務に取り組むためには、「自立」と「自律」が必要である。
「自立」とは、自らを立たせること。
つまり、経済力やスキルなど、外的な要素を身につけ、それらを使いこなせる状態のことを指す。
「自律」とは、自らを方向づけること。
つまり、考えや価値観を自分の中で育て、それを軸にして判断・行動することを指す。
主体性発揮のためには、どちらの「じりつ」も大切だ。
まずは「自立」し、その後「自律」して業務に取り組めるよう、若手社員を指導していくことが必要である。
主体性発揮を加速させる「自導」
若手社員がより主体的に動くためには、「じりつ」とともに「自導」も必要だ。
「自導」とは、自らを最終的な目標や理想に導くことだ。
セルフリーダーシップという言葉で表されることもある。
「社内でトップ営業マンになる」や「誰も思いついていない企画を立案する」など、若手社員は漠然とした理想を抱いている。
それを上司が引き出し、具体的な目標として設定することができると、若手社員はより主体的に動くようになる。
主体性発揮のための「モチベーション」
仕事におけるモチベーションとは、やる気を上げるためのスイッチだ。
このスイッチをオンにする要因は、人ぞれぞれ違いがある。
例えば、仕事内容や評価、給与、待遇、社内の人間関係などがモチベーションに繋がりやすい。
自分の能力が上がり、それが評価されて仕事内容が変わり、給与や待遇といった条件面が向上していくと、モチベーションアップのとても良いスパイラルができる。
主体性発揮を促す「内発的動機」と「外発的動機」
「内発的動機」と「外発的動機」では、どちらが主体性発揮を促すのだろうか。
「内発的動機」は、自分自身の中から生まれたモチベーションのことである。
「外発的動機」は、自分以外の外の要因から作り出されたモチベーションのことである。
どちらも若手社員の主体性を促すが、より主体性発揮をさせるのは内発的動機である。
若手社員に主体性を発揮させるためのケーススタディ
若手社員に主体性がないと感じる場面と、その際の上司の対応例について考えてみよう。
会議や研修で主体的な発言を促す方法
誰も手をあげない会議や決まった人しか発言しない研修が日常的になっている企業も多いだろう。
普段聞くことのない若手社員の意見こそ、会議や研修で集めるべきだ。
そのために、上司は以下のようなきっかけを作る必要がある。
≪主体性発揮のためのきっかけ作り≫
・若手社員の発言を歓迎する雰囲気を作る。
・一人ずつ順番に発言させていく。
・上司の代わりに発言させる。
・若手社員の発言を否定しない。
・小さなことでもいいので、若手社員の提案を取り入れる。
発言が受け入れられて業務が変わっていく成功体験が、若手社員の次の主体性発揮へと繋がっていく。
顧客からのクレーム対応を丸投げさせない方法
顧客からのクレームを上司に報告する際に、「お客様がこのように言っています」、「問題になっています」と、状況報告しかしない若手社員が増えている。
報告だけでなく、自分で考えた問題解決の方法についての意見を加えるのが、主体性のある社員の対応である。
そのためには、問題解決について日ごろからトレーニングする必要がある。
≪主体性発揮のための問題解決トレーニング≫
(1) 目の前の業務の問題点を考えさせる。
(2) その問題の原因について考えさせる。
(3) その原因の解決方法についていくつも提案を挙げさせる。
(4) そのうちのいくつかを実際に実行する。
(5) 問題を解決させて自信を付けさせる。
普段の業務の中で問題を見つけ、自身の意見でその問題が解決していくという経験を積ませて、若手社員に自信を付けさせていくことが大切だ。
自分の担当外の業務にも積極的になる方法
自分の担当領域以外の仕事には関わりたくない、と考える社員も多いだろう。
仕事の範囲を限定することは、スキル向上のチャンスを自ら放棄することだ。
若手のうちから様々な業務を経験できるよう、上司が配慮していく必要がある。
≪主体性発揮のための上司の配慮≫
・一つずつ若手社員の業務を増やしていく。
・本業と違う業務をやらせる場合は、それを評価に反映させる。
・失敗したら上司の責任、成功したら部下の手柄であることを伝える。
・一緒に悩んで考える。
・小さなことでも褒める。
若手社員が臆せずに新しい業務にチャレンジできるよう、上司は細かな配慮をしていかなければならない。
主体性発揮のための指導のポイント
若手社員が主体性を身につけ、発揮するためには、以下のようなポイントを押さえた指導が必要だ。
自分の現状を把握させる
主体性を身につけるために最初に行うことは、現在の自分の状況を把握させることだ。
自分の置かれている立場、担っている役割、達成しなくてはいけない目標、今後身につけていかなくてはいけないスキルなど、自分の現状を振り返り、把握するための時間を作ることが必要である。
視野を広げさせる
自分の現状を把握したら、次は同僚の状況を考えさせる。
周りはどんな仕事をしているのか、社内にどんな仕事があるのか、自分にもできる仕事はないか。
そして、その業務を実際に担当したら、周りがどれだけ助かるだろう、自分にどんなスキルが身につくだろう、どんな評価が待っているだろう、と考えを進め、視野を広げていくことが、主体性に繋がっていく。
自分で目標を設定させる
主体性を持続的に発揮するためには、業務における目標を持つことが効果的だ。
会社員であれば、営業数値やコスト削減など、何らかの目標を持つことが多い。
ここでいう目標とは、「自分自身で設定した目標」のことだ。
自分の現状を振り返り、周りの状況も考え、今の自分には少し背伸びをした目標を設定させよう。
周りが決めるのではなく、自分で決めることが重要だ。
G-PDCAで実行させる
目標を設定したら、「G−PDCA」で実際に実行することが必要だ。
PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を回していく、業務改善のためのビジネスフレームワークだ。
主体性発揮のためには、PDCAを回す前に、まず「G」=Goal(目標)を設定することが必要である。
もちろんここでいうGoal(目標)とは、自分で設定した目標を指している。
PDCAを回すためには、「見える化」「仕組み化」「習慣化」の3点が重要だ。
「見える化」:数値化して書き出す
「仕組み化」:誰でも同じことができるようなシステムをつくる
「習慣化」:やることとやる時間を決めて実行する
PDCAを回していく中で、失敗することもあるだろう。
その失敗から新しい仮設を立てて、計画や行動を改善し、次に活かす。
成長し続ける人は必ず目標を達成するので、また次のステージの目標を設定させる。
これを繰り返ししているうちに、自分の担当領域が広がり、新たな業務に主体的にチャレンジしていくことができるのだ。
まとめ
若手社員の中から、将来、会社の核となる中堅社員(リーダー)を育成していかなくてはならない。
そのためにも、若手社員の主体性発揮スキルの強化は必須だ。
この記事を参考に、面談や研修を通して一人でも多くの若手社員が主体性を身につけ、発揮できるようになることを願っている。
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