現代社会において、お客様の要求は高まるばかりだ。
世の中が便利になればなるほど、お客様の満足度のハードルは高くなり、些細なことで不満を感じて怒りを爆発させる。
このページでは、理不尽な要求を突きつけられたときのクレーム対応のポイントを紹介する。
店舗を運営するマネージャーだけでなく、現場で働いているすべての従業員に参考にしてほしい。
Contents
クレーム対応のポイント
クレーム対応で特に大事なポイントは以下の5つだ。
(1) お客様の指摘は基本的に正しいと思え。
(2) どんなクレームも顧客満足の視点を忘れてはならない。
(3) 事実関係がはっきりしないうちは闇雲にお詫びをしてはいけない。
(4) すべてのクレームはスピードが勝負である。
(5) 個人で対応しきれないクレームは組織で対応するべきだ。
もともとクレームというのは、お客様から頂戴する【ご意見・ご指導・ご要望】である。
クレームこそビジネスのクオリティを高めていく大きなチャンスだ。
クレーマーは3種類に分けられる
近年は、普通の人が「お客様」から「クレーマー」に豹変する時代になった。
もともと善良なお客様だった人が、日ごろの鬱憤をはらすかのように嫌がらせをしたり、理不尽な要求をして金品を要求するクレーマーに豹変する。
そのようなクレーマーに対応する前に、まず、クレーマーの種類について知っておくことが重要だ。
ホワイトゾーンのクレーマー
ホワイゾーンのクレーマーは、正当な要求を訴えるお客様である。
クレームは本来、ネガティブな言葉ではなく、お客様の声として大切に扱うべきものだ。
クレーマーの大半は、ここのホワイトゾーンに属している。
ブラックゾーンのクレーマー
ブラックゾーンのクレーマーは、反社会的勢力が関わるクレーマーである。
金品を脅し取る目的で恐喝まがいの要求をしてくるクレームがこれに当たる。
近年では、法律による取り締まりが強化されたことで、このゾーンのクレーマーは減少していると言われている。
グレーゾーンのクレーマー
グレーゾーンのクレーマーは、理不尽な要求を繰り替えす一般市民のクレーマーである。
日ごろのストレスを発散するためにクレームをしているケースや、仕事をリタイヤした高齢者が疎外感や孤独感、寂しさを紛らわすためにクレームをしているケースも増えている。
近年大きな問題になっているのが、このグレーゾーンのクレーマーだ。
グレーゾーンのクレーマーの3タイプ
急増しているグレーゾーンのクレーマーは、さらに3つのタイプに分けることができる。
タイプ1:急変クレーマー
はじめから悪意があったわけではないが、ふとしたことをきっかけに怒りにまかせて大声を張り上げたり、文句を並べ立てたりするのが特徴。
日常的に不安やストレスなどを抱えている方が、思い通りにならない苛立ちをクレームで発散するタイプ。
タイプ2:執拗クレーマー
過剰な要求を執拗に繰り返すクレーマー。
些細なことで何かと文句をつけ、あわよくばいい思いができるのではないかともくろんでいたり、土下座を強要するのもこのタイプ。
グレーゾーンのクレーマーのなかでも急増しているやっかいなタイプ。
タイプ3:常習クレーマー
善良な市民を装っているが、犯罪の一歩手前の手口を使って金品を搾取したり、特別待遇を求めたりする、悪質性の高いクレーマー。
常習的なクレーマーが多く、用意周到な計画を立てるセミプロも多い。
クレーム対応の3つのステップ
クレーム対応では、しっかりとした手順を踏んでいくことが大事である。
ここでは、どのようなクレームでも通用する3つのステップを紹介する。
ステップ1:クレームの初期対応はお詫びのひと言から
クレームの対応は、まずお詫びのひと言がなければ始まらない。
下記のような意見もあるだろう。
・相手の言い分にどうしても納得がいかないのになぜ謝罪が必要なのか。
・謝罪すると過失を認めたことになり、後々やっかいなことになるのではないか。
確かに、事実関係がはっきりしない段階でお詫びする必要はないという考え方もある。
しかし、お詫びの言葉を使わずにクレームを収束させることは難しい。
むしろ、安易にお詫びをしてはいけないといった考え方は、クレームを長期化させる大きな要因となる。
クレームへのお詫びの種類
お詫びには2種類ある。
(1) 非を認める正式なお詫び
(2) 相手の怒りを鎮めてクレームを長期化させないためのお詫び
初期の段階で必要なお詫びは、(2)の相手の怒りを鎮めるためだと思ってほしい。
ポイントは、「全面的なお詫び」ではなく、「限定的なお詫び」にすることだ。
クレームへの限定的なお詫びの例
限定的なお詫びには、以下のようなものがある。
・相手に不快感を与えてしまったことに対するお詫び
→「まずはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。」
・相手が感じている不満に対するお詫び
→「この度はご迷惑をお掛けして、申し訳ございません。」
・手際の悪さに対してのお詫び
→「お待たせしてしまい、申し訳ございません。」
このような限定的なお詫びをクレーム対応の初期段階でしっかりしておくことで、多くのクレームは沈静化していくことを覚えておいてほしい。
ステップ2:クレームの解決を急がない
クレームの多くは「謝って済む問題」が8割である。
ただ、誠意をもってお詫びしても、なかなか許してくれないお客様もいる。
そんな時に肝に銘じておかなくてはならないのは、「解決を急がない」ことだ。
早く終わらせようとする姿勢は相手に伝わり、余計に問題を大きくしてしまう。
まず、最初の30分を意識して対応することが重要だ。
最初の30分はクレームの実態を把握する時間
「限定的なお詫び」をしても解決にならなかったクレームは、その原因についてさらに深く考える必要がある。
そのために大事なのは、お客様の言い分をよく聞き、クレームの実態を把握することだ。
いたずらに時間を使うのではなく、最初の30分に集中してヒアリングしよう。
そして、こちらの非が認められる場合は、その非について誠意を込めて謝罪をしよう。
クレームの実態が把握され、適切な謝罪がされれば、多くの場合はこの最初の30分で解決するだろう。
30分を過ぎてからのクレーム対応
30分を過ぎてもクレームが解決しない場合、その日は一旦切り上げることをお勧めする。
例えば、しつこく特別待遇や今すぐの即答を要求されたら、「私一人では判断できません」とその場での回答は避けるべきである。
この段階では解決は急がず、対応策を練るためにも一旦切り上げることが重要だ。
過剰な要求には「できること」と「できないこと」をはっきりと伝える
クレーマーからの過剰な要求には、企業として「できること」と「できないこと」をはっきりさせることが必要だ。
どんな要求をされても、「これ以上はできない」というボーダーラインを決めておくことで、従業員はその基準で対応することができる。
基準を超える要求をしてくるクレーマーには、「ご納得いただけないのは残念ですが、私どもにも、できることとできないことがあります。どうぞ、そこのところをご理解ください。」と言えばいい。
ステップ3:クレームは組織で解決する
ここまでお伝えしたステップでも解決しないクレームは、一人で対応し続けないことが重要だ。
どんなにタフな担当者でも、一人でクレーマーに立ち向かっていては疲弊し、いずれ心が折れてしまう。
一人の担当者としてベストを尽くした上で、それでも解決しないクレームは、上司や別の従業員などにバトンタッチすることをお勧めする。
クレーム対応する担当者を変えるメリット
クレーム対応する担当者を変えることは、興奮したクレーマーをクールダウンさせる上でも効果的である。
ここで大事なのは、組織として判断した「できること」と「できないこと」の基準を再度明確に伝え、「恐れ入りますが、これ以上はご要望にお応えできません」と繰り返し伝えることだ。
また、それを担当者個人としてではなく、組織としての回答にすることが重要である。
まとめ
クレーム対応は、誰でも嫌なものであり、苦手意識があるものだ。
しかし、クレーム対応を学ぶことは、「聴く力」「マナー」「適切な言葉遣い」「プレゼン力」「交渉力」など、総合的なコミュニケーション力を身につけることにも繋がる。
このページを参考にして、クレーム対応を前向きにとらえ、クレームの早期解決ができる従業員が一人でも多く現場で活躍してくれることを願っている。