新人の教育係は大変だ。特に社会人経験のない新卒社員を育てるのは骨が折れる仕事だ。
お手本になるような行動をしなければいけないし、他の教育係とも比べられる。新人育成に時間もつかわなければいけないことから、残業も増えるだろう。
しかし、あなたが教育係に選ばれたということは、新人を預けるに足る存在だと会社に思われているということだ。自信を持って取り組んでほしい。
このページでは、新人の教育担当になったときの10のポイントをまとめた。教育係になったら、ご一読をおすすめする。
Contents
新人の教育係になったとき押さえたい10のポイント
新人の教育係には2つのポイントがある。
・成長して、なるべく早く戦力になってもらう
・すぐに辞めさせない
という2つのポイントだ。
どちらも考えないといけないことだが、前者をメインとして押さえたい10のポイントをまとめた。
その1. 育成計画を明確にする
まずやりたいのが育成計画を明確にすることだ。
すでにしっかりとした育成計画ができあがっていれば問題ないが、もし用意されていなければあなたが作らなくてはいけない。
育成計画といってもそれほど難しく考える必要はない。要するにできるようになってほしい仕事、それにともなうスキルを分解してスケジュールに落とし込むことだ。
できるようになってほしい仕事が「電話応対」だとすると、そのために必要なことを書き出す。
- 敬語が使えるようになる
- 内線の使い方を覚える
- 電話のメモの取り方を覚える。電話メモの共有の仕方を覚える
- スケジュールを確認できるようにグループウェアの使い方を覚える
- etc
などだ。これをスケジュールに落とし込んでいく。
日々で組んでもいいが、仕事中は次々に新しい予定が入ってくるものだ。スケジュール通りに進めるのは難しいだろう。そのため、スケジュールは週ごとで構わない。
「1週目にはこの仕事を覚えて、このスキルを身につけてもらう」「2週目にはこの仕事を覚えてこのスキルを身につけてもらう」というのが明確化されていれば、一週間でやることが明確になる。
一週目
内線の使い方を覚える
電話のメモの取り方を覚える。電話メモの共有の仕方を覚える
二週目
敬語で話す練習をしてもらう
1回目の電話応対にチャレンジする
などだ。
これを用意しておくと、「新人さんは、どこまでできるようになったんですか?」という上司や同僚の質問に対して明確に答えられるようになる。
新人の側もそれを見ると自分のがやるべきことが明確になり成長しやすい。反対に遅れていると、焦ってくれるだろう。
計画の作成ははじめから完璧にする必要はない。計画を一度立てれば後は毎年少しずつ修正して同じ計画を実行していけばいい。
「ここはもう少し時間がかかるな」「ここはもっと短くていいなど」判断が付けられるようになる。そうすれば育成計画は毎年少しずつレベルアップしていくはずだ。
一番初めに育成計画を作るのは苦労するかもしれないが、ぜひ作成をしてほしい。まず一番はじめにやりたい教育係の仕事だ。
その2. ゴールを明確にする
教育期間のゴールを明確にしよう。
教育期間はそれほど長くない。あなたの下にいるのも3ヶ月から半年くらいだろうか。その間にすべての仕事を完璧にマスターするのは難しい。スキルにもばらつきがあるし、人それぞれ得手不得手がある。
そんな状況で新人に多くを望みすぎるとパンクをしてしまうし、結局何ができるようになったかわかりにくいだろう。
だからこそ、教育期間を通じて、どうなってほしいのかを明確に新人に伝えるのがいい。できれば、3つ以下、多くても5つに絞って伝えることだ。1つでも構わない。
「電話応対が100%できるようになってほしい」でもいいし「営業で一件案件を獲得してほしい」でも構わない。「誰よりも礼儀正しく対応できる接客力を身につける」でもいいだろう。
人はゴールを与えられると頑張るものだ。反対に明確な目標がないとなかなか行動に移しずらい。目標が多すぎても同じことだ。
教育担当になったら、明確に、「あなたが私の下にいる3ヶ月間でこうなって欲しいと思っています」というゴールを明確に伝えてあげよう。
もちろん教育計画通りに進めていくのだが、その中でもどこが重要かを伝えるということだ。「ここだけは!」というのを明確にして、集中してもらおう。
その3. パートナーとして接する
新人の教育係になったとき、どうしても上から目線で接してしまう人は多い。「自分の方が仕事ができるから」という理由だ。
しかし、仕事ができるのと、上から目線で接していいというのは違う。新人が急成長してあなたより仕事ができるようになったとき上から目線で指示を出されたらどうだろうか?
だから「社会人として対等」に接しよう。注意するべきところは注意するが、新人だから○○して、というのは今の時代に合っていない。
それが仕事内容に明確に記述されているなら構わない。しかし、例えば「お茶汲みよろしく」「コンビニで買い物よろしく」「新人だから30分前に出社して掃除をすべきだ」などと言うのは勘違いもいいところだ。
教育係が雇っているのではなく、会社が雇っている。教育係と新人には何も差がない。あくまでもパートナーが一人増えたとして接するべきだ。
パートナーとして不満があるところは明確に言おう。「寝癖を直してこない」や「遅刻して来る」など。
もちろん程度ものだ。どうしても上からになることはある。しかし、意識しているのとしていないのとでは大きな違いだ。
「さん付け」「敬語」で接すると自然とそういった姿勢が生まれてくるので、こちらもおすすめだ。
その4. 自分の意見ではなく会社の意見を尊重する
新人に教えるときには、自分の意見と会社の意見をも明確に分ける必要がある。そして、極力自分の意見は言わないことだ。
「会社のルールではこうなっているんだ。私はおかしいと思うんだけどね、ルールだからさ」などという教え方は色々なところで聞く。フランクな人を演じているのかもしれないが、新人にとってマイナスにしかならない。
- おかしなことがまかり通っている会社という印象
- 不平を言っても許されるという風土
が新人に伝わるためだ。
「会社のルールではこのようになっている。もっとこうしたらいいというのがあったらぜひ教えてださい。一緒に直していきましょう」と伝える方が会社全体の雰囲気を良くしていくのに良い。
自分の意見は、新人が育ってから、熱い議論の場で話合おう。
また、そもそも、おかしいと思うルールや方法があるなら、新人に言うのではなく、それを直しにいくのもあなたの仕事だ。難しいこともあるが、教育担当としてはそう思っておこう。
その5. 目的を伝えてから仕事をしてもらう
研修全体としてもそうだが、仕事の投げ方に問題がある場合も多い。これやっておいてという指示の出し方では新人は成長しないし、ミスもする。
大事なのは目的を伝えて仕事を渡すことだ。
「この資料のコピーを10部お願い」ではなく、「○○の部門会議に使うので、この資料をコピーして印刷してもらっていいですか? 10部です」と指示する。
そうすれば、「社内会議なので白黒コピーでいいですか?」などあなたが指定をし忘れたことを向こうから確認してくれる可能性が高くなる。
目的を考えて行動するのと、目的を考えずにタスクをこなすのでは必然的に品質が変わってくる。目的をしっかりと伝えてあげ、考えることを習慣化してもらおう。
もちろん期限や優先順位も伝えてあげるのは大前提だ。
その6. 会社や同僚を褒める
新人とランチなどに一緒に行くこともあるだろう。そのような場で、同僚や会社の悪口に聞こえかねない軽口は慎もう。
彼らは初めての職場で不安がっている。そんなときに、会社や同僚の批判を聞いたらどうなるだろうか? 「この会社で大丈夫だったのだろうか・・・」と不安が大きくなり、やる気も下がっていくだろう。
会社や同僚を褒めよう。できる限りだ。いいところをピックアップして紹介しよう。そうすることで、新人の会社や部署のメンバーに対するイメージも良くなるし、あなたへの印象そのものが良くなる。
どんなに嫌な同僚であっても陰口は言わぬこと。鉄則だ。
その7. 会社の文化を浸透させる
会社の文化を浸透させる努力を、あなたもする必要がある。そうした方が、仕事を早く覚えるし、なにより新人のためだ。
例えば、どうしても接待が必要な職種がある。MR(製薬会社)の仕事などは接待ありきで、営業が進んで行く。そんな中、「接待は仕事に入らないですよね?」とさっさと帰ってしまう新人がいるとどうしても仕事が回らなくなる。
飛び込み営業が必須の会社もあるだろう。車を運転し、様々な場所へ行かなくてはいけない会社もある。土日の勉強会が必須の会社もあるし、常に面白い意見を求められる会社もあるだろう。
企業のビジネスモデルは千差万別だ。ビジネスモデルからも文化は出来上がってくる。こういう文化には早めに慣れてもらう必要がある。
新人のときほど、様々なものへの抵抗感は少ない。早い段階で文化に合った仕事などを体験してもらい、極力その場を有意義なものにしてあげよう。
文化に明らかに合わない新人がいれば、早めに人事に相談して、別の部署に移すなり、面談の機会を持つことだ。そういう新人が入って来てしまうと、部署全体の空気が悪くなってしまう。それをコントロールしてあげるのもあなたの仕事だ。
その8. 細かいところは大目に見よう
はじめから100%仕事ができる新人などいない。どこかしらに欠点がある。「接客は丁寧で好ましいが、仕事が遅い」「仕事は早い、雑」など様々ないい点、悪い点がある。
初めから細かいところをチェックして育てるのはやめよう。また、叱って育てるのはもっと良くない。すぐやめてしまう。
細かい部分には目を瞑ろう。まずはやってみるということが大切だ。作成文書の多少のミスは直してあげよう。それを新人に送る必要もない。ミスを見つける度に教えてあげるのが新人のためだと思っている人がいるが、違う。
はじめはアップアップなのだ。それどころではない。余裕が出てきたら、細かいところまでチェックして教えてあげるべきだ。
まずは70点でもできていれば大げさに褒めて、それで良しとすることだ。徐々に叱るべきところは叱って、締めていけばいい。
その9. ○○世代だから、と一緒くたにしない
ゆとり世代やさとり世代という言葉が流行っている。ゆとり世代に至ってはもう一般用語だ。
しかし、ゆとり世代がすべて悪い訳ではない。世代まるごと批判されるのはいかがなものだろうか?
そもそも毎年「今年の新人は・・・」と言われ続けている。○○世代だから、という以前の話として、新人は仕事ができないものだ。新人なのだから。
人間心理とは不思議なもので、ゆとり世代だと思って接すると、ゆとり世代だと思えてくる。マイナスなところに集中的に目が行くはずだ。
世代を丸ごと一緒くたにせず、個人個人を尊重して接するようにしよう。コミュニケーションを大切に。
その10. 良質なやせ我慢を覚えてもらう
最後に、「良質なやせ我慢」について。
仕事というのは多くの場合、「人がやりたくないこと、できないことを代わりにやること」だ。もちろん例外もあるが、ほとんどの仕事はこれに当たる。
この大前提の中で、「良質なやせ我慢のもと」働くという感覚を新人には覚えてもらう必要がある。
- 接客が苦手であっても、接客仕事として職を得ている限り笑顔でやらないといけない
- 営業が苦手であっても、営業マンとしてやらなければいけないことがある
- 人がやりたくない仕事でも積極的に実施してはじめて組織が回る
- 会社の方針に疑問を感じても、自分を納得させて前に進む(もしくは明確な意思として疑問を表明する)
こういった良質なやせ我慢があってはじめて、組織が回る。部活でもサークルでも同じだっただろう。誰かがその役割を担っているはずだ。
お給料をもらって働く以上、全員が「良質なやせ我慢」のもと働く必要がある。新人にそういった姿を見せる努力をすることだ。
そういう姿を見せていると、自然と積極的に動いてくれる新人になっていくものだ。大変だが、教育係の頑張りどころだ。
まとめ
「新人の教育係になったときおさえておきたい10のポイント」についてお伝えしたが、いかがだっただろうか?
教育係になると大変な部分もあるが、教えることによる学びも大きい。ぜひポジティブに捉えて、新人を育成してほしい。
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