「新人教育にマニュアルは必要ですか?」と聞かれたら、答えはイエスだ。
あった方がいいというよりも、なくてはいけない。
特に今後は少子化の影響が大きく出てきて、自社に入社してくる新入社員のレベルは落ちていくと思った方がいい。これはもう避けられないことだ。
そんなときでもマニュアルは活躍する。
なぜ新人教育にマニュアルが必要か?
新人教育にマニュアルが必要な理由は大きく3つある。
- 一定のレベルまでなるべく早く到達するため
- 属人化をなくすため
- 業務をよりより状態にするため
の3つだ。
一定のレベルまでなるべく早く到達するため
マニュアルがあることにより、一定のレベルまでは早く到達することができる。
品質が高いマニュアルがあれば誰にも聞かずとも、多くの事務処理などはこなせてしまう。
一時、寿司アカデミーのようなものが人気を集めた。寿司を半年から1年ほどで握れるようのなるというスクールだ。
従来寿司を握るには、寿司屋に弟子入りして、皿洗いから、お味噌汁など他の料理を担当し、数年経って、ようやく握り始め、それも教えられるのではなく背中を見て技を盗むというものだった。
寿司アカデミーができて、寿司を学ぶ期間はとても短くなり、実際卒業生が多くの店を出した。
企業も同じ
企業も同じだ。「背中を見て、先輩と同じ苦労をしろ」というのは企業にとって意味のあることではない。
既存の仕事を覚える時間は短ければ短い方がいい。時間をかけていたら、その間に時代は変わる。そんな時間があれば、業務のブラッシュアップに使った方が会社のため、そして顧客のためだ。そもそも新人がやめてしまうだろう。
ある一定のレベルの仕事はマニュアルを見ながらすぐに覚えられるようにすべきだ。マニュアルがあれば学べる速度は圧倒的に早くなる。
VARKシステム
VARKシステムという考え方があって、人間は4つのタイプに分かれるという。
- 目で見て勉強するタイプ
- 聞いて勉強するタイプ
- 読む・書くタイプ
- 運動して覚えるタイプ(反復練習タイプ)
だ。
口頭でレクチャーするだけでは、1番目と3番目のタイプは学べないことになる。スキルを均等にあげるためにも、マニュアルで可視化すべきだ。
属人化をなくす
マニュアル化を進めることで、属人化を減らすことができる。
口頭OJTの場合、言うことが人によって違うということが頻繁に出てくる。これが人依存だ。人依存が出てくると、新入社員は混乱するし、一気に業務がよくわからなくなる。
教えるのが下手な人に当たった新人は不幸だ。成長もしないし、会社からの評価も低くなる。
だからこそ、マニュアル化して統一を図るべきだ。
属人化がなくなることによる危機管理
企業としても、安心材料がひとつ増える。担当者が辞めてしまったらどうしようもないという状態から抜け出せるということだ。
誰かが聖域を作っていると、そこの人材がどれほど仕事を怠けていても制裁を加えられなくなってしまう。マニュアル化して知識共有を図ることでリスクを分散することができる。
もちろん事故にあって、業務ができないときなども同じだ。
教える側としても初回作るのは大変かもしれないが、あとはマニュアルを渡してわからないところを聞いて、とできるのでとても楽だ。必ず業務の効率化が進んで行く。
業務をよりよい状態にする
マニュアルを作ることによって、その業務に対しての基準ができる。
基準ができると最低限全員はそこを実施する義務が発生する。まずはこれが大事だ。ベテランになるとサボり方を覚えてしまい、手を抜く可能性があるが、ベテラン故に他の人が指摘しにくい。
書いてあることをやっていないのは、個人面談の際にシートなどで明確にチェックができるので注意がしやすい。
また、基準ができることによりそれを改善もしやすくなる。
誰かが業務を改善をしても、慣性の法則により、元に戻りがちだ。だからこそ、マニュアルを改善するという具体的な行動によって、それを固定化する必要がある。
曖昧な状態でいくら良くしてもその状態は長く続かないものだ。不文律のようなものも、あってしかるべきだが、多すぎると新入社員が入ったときに「わけわからん。なんだこの会社」となってしまう。
マニュアルを整備することで、成長を早め、事業としても健全な状態にすることができる。
人材育成のためのマニュアルの作り方
マニュアルの作り方にはいくつかポイントがある。
どこに保存するか?
その中でも抑えておきたいのは、どこに保存するかだろう。
事業体によってどちらかが有効になる。
- 常にPCが目の前にある業務であれば、検索できる環境に置く
- ない業務であれば、その仕事に関係があるところにおく
たとえば店舗系サービス業であれば、PCがないのでレジのマニュアルはレジ近くに、倉庫のマニュアルは倉庫に置く。もちろん印刷してファイリングして設置する形だ。
反対に事務職や営業職など目の前にPCがあり使える場合には、マニュアルはオンライン共有だ。リアルタイムで更新ができるし、検索して一発で表示ができるのがいい。この検索機能がマニュアルにとって最重要なもののひとつだ。
作成の方法はいろいろあるが、とりあえずGoogleDriveというGoogleの無料サービスを使ってマニュアルをまとめるのがいいだろう。その後必要なら、専用のソフトウェアに乗り換えていく。
作成のステップ
ステップは次のとおりだ。
ステップ1.マニュアルを2,3本あなたが自分で作ってみる
まずは人に作成を頼む前に2,3本見本となるようなマニュアルを作ってみる。作ってみると色々な気づきがあるはずだ。
それを次のフォーマットに落とし込む。
ステップ2. フォーマットを決める
マニュアルのフォーマットを決める。フリーフォーマットは作成に時間がかかるようになるのと、統一感のなさからマニュアル作成能力がない社員のマニュアルは目も当てられないものになってしまう。
弊社では次のようなフォーマットを使っている。
タイトル(14ptで少し大きく)
created by 作成者の名前
updated at 2015/11/25 by 更新者の名前【当マニュアルの目的】
目的を記述
【検索用キーワード】
gmail/メール/thunderbird/マニュアル/マニュアル/マニュアル/マニュアル
検索で引っかかりやすいようにいくつかキーワードを入れておく【先に見ておくべきマニュアル】
先に次のマニュアルを閲覧してください
URL: マニュアルのURL【詳細】
ここに内容を書く
ここでは表示しにくいがフォントサイズなども決まっている。
(現在は自社独自システムFosterを用いているため、ここの辺りは気にしていない)
ステップ3. マニュアルの作成マニュアルを作る
これが意外とできていないのだが、マニュアルの作成マニュアルは必須だ。
フォーマットを統一するという意味もあるが、なにより作るときに考えなくて済むというのが大きい。
人間面倒なことは続かないものだ。マニュアル作成はただでさえ面倒な作業だ。それをいかに楽にするかは仕組みの仕事だ。
ステップ4. あとはベテレン社員に簡単に作ってもらう
100%全力でなくとも、とりあえずでまずは作ってもらう。とにかく土台となるものが必要だからだ。あとは改善を続けていけばいい。
どうしてもやってくれなければ、初めから新人に作らせるでも構わない。
ステップ5. 日々アップデート
後はひたすらにアップデートを続けていく。アップデートしていないマニュアルはすぐに役に立たなくなる。業務フローが変わったり、ルールが変わった場合すぐに切り替えが必要だ。
Whyを説明する
マニュアルで重要なのは、「なぜそれをするか?」だ。何をだけではなく、その理由を書くことで納得感を持って仕事を進めることができる。
理由を書くのを忘れずに、それもマニュアルの作成マニュアルに書いておこう。これは大切なノウハウなので、覚えておいていただきたい。
まとめ
マニュアルを作成するのは大切だ。
どんな業務であってもマニュアル化できるし、それによって無駄な労力を減らし、クリエイティブな作業に時間を避ける。
大変なのははじめの3週間だけだ。気合を入れて一気に作成してしまおう。