「新入社員研修の目的は?」と聞かれたら、もちろん答えることができるだろう。
しかし、その目的が新入社員に明確に伝わっているかと言われるとそうでもないかもしれない。
研修の目的は明確にする必要がある。目的を明確にしないと、新入社員が目指すべきところがわからないし、研修全体の設計もできないからだ。
このページでは新入社員研修の目的を明確にし、それらを新入社員に伝える方法についてお伝えする。研修担当者および経営層は参考にしていただければと思う。
Contents
新入社員研修の目的とは?
新入社員研修の目的は大きく分けて4つある。
目的その1 社会人の基礎能力を身につける
新入社員、特に新卒内定者は社会人の経験がない。そのため、社会人に必要な最低限のビジネスルールも知らないことが多い。
だからこそ、研修期間中にその多くを学んでしまう必要がある。顧客を実験台にするわけにはいかないからだ。
とはいえ、どれほど日数をかけても、実践にいくまでに完璧という状態にすることはできない。2、3日間の研修で十分だろう。Off-JTとして、ビジネスマナーを教えることが重要だ。
とにかメンタル的な部分よりも、一番手っ取り早く必要なのが、このスキルだ。何もわからない状態で世に出し、自信を無くさせる必要はない。
ここは必ず通過させるべきだ。
目的その2 会社の業務に早くなじめるようにする
現場で人が十分に足りていればいいのだが、大抵の場合人数に対して仕事は多くなっているものだ。パーキンソンの法則で言われるように、人の時間に対して仕事は限界まで膨張するようにできている。
その状態の現場に新入社員を入れると、当然より忙しくなって通常業務にアラが出てくる。
ではどうしたらいいかというと、事前に足手まといにならないようにしなければいけないということだ。そのために新入社員研修を実施する。
OJTとは日本の場合、名ばかりの現場放置になっている企業が多いので、Off-JTの設計をまずはやって整えてしまう方がいい。
どこまで育てるかは各業態によるが、まずは新入社員全員やる必要がある共通項をマスターするという視点がいいだろう。
例えば、
- 社内システムを一通り使えるようにする
- PCがつかえない社員がいるようであれば、ワードエクセルなど使う必要のあるオフとがトレイーニングしてしまう
- 営業部隊であれば、商材関係なく、このような手順で売っていくのだという概要を伝える
これらを事前にやっておいてもらえると現場は楽になる。
また、もう一つ手前に「業界の知識」を一通り学んで貰うことは有効だ。
例えば車業界であれば、「車の歴史」「現在の業界の情勢はどのようなものか」「現在のユーザーの視点」「自社が目指している優位性」などの全体像を先に理解しておくと、部署別の知識も身につきやすい。
全体から部分への流れを意識して構築するといい。
目的その3 理念浸透
理念は新入社員のうちから浸透させていかないといけない。
企業理念をお題目的というか軽く扱っている企業も多い。しかし、大事にし、それを達成しようと行動している企業は必然的に強い企業になっている。これは事実だ。
だからこそ理念浸透は新入社員のうちから実施していく必要がある。もっと言えば、入社前から理念でスクリーニングをかけておかないと、後々困ることになる。
もちろん100%浸透するわけでもない。人間にはそれぞれの考え方があるからだ。しかし、その方向で全員の視点を合わせておかないと、力が発揮されないことは想像できるかと思う。
例えば、
- 営業は一点特化で安い商品を売りたいと思っている
- 開発は金額は高くても最先端技術の商品を作りたいと思っている
- 製造は適正価格で良い商品を作りたいと思っている
という状態だと、いちいち部門間で争いが起きるし、事が前に運ばない。新入社員時代からミッションドリブンな経営をしたいところだ。
もちろん新人が理念について語れるようになるわけではない。しかし、何度も繰り返し聞かされるだけで大きく変わってくるものだ。
目的その4 同期コミュニケーション
「同期は全員仲良くやろう」と会社側が主張する必要はあまりない。同期と仲良くなくても、チームメンバーとは仲がいい優秀なメンバーというのはいくらでもいる。
しかし、薄くとも横のつながりを作っておくのは大切だ。
違う部署の状況を聞いたり、部署内でわからないことを他部所に聞きに行くときなど、その自社内人脈がすべてだ、ということは大きな企業内では多々ある。あなたの会社もそうかもしれない。
そういう場合のために薄くとも横のつながりは作れるように、同期同士の交流は一度取るべきだ。新入社員研修はその場にふさわしい。
+企業毎の内容
新入社員研修の主たる目的は上の4つの項目だ。これに加えて、企業毎に目的を加えていくことになる。
ポイントとしては、幅を広くしすぎず、カッツ理論に準ずるように、スキルとヒューマンスキルを重視することだ。
スキル面
例えばエンジニアになるのであれば、エンジニアリングを勉強してもらわないといけない。これはOJTでやるとかなり大変なことになる。練習と試合は違うように、学習と仕事もやはり違ってくる。
実践も勉強になるが、その場的な対応が集中的に身についてしまう。その場対応しかできない人材に育てたくなければ教えられるテクニカルなことは教えてしまった方がいい。
他にも、ミスが許されないような職場であれば、いかにミスをしないかという方法論を解いたり、メンタル不良が多い職場であればストレスコントロールの研修も組み込むべきだ。
ヒューマンスキル面
ここは上記のビジネスマナーも関わってくるが、結局は"躾"だ。社会人に何を、と思われるかもしれないが、他にいい言葉が思いつかないし、意味合いはまさしくこれだ。
色々な家庭で育っているし、大学は自由なので、千差万別いろんな人種がいる。それを良しとするのもいいが、企業体として「ここは最低限」という基準は作って伝えないといけない。
もっとも基本的なことは「素直にまずは聞こう」ということだろう。就職活動中の素直さは、入社後すぐになくなっていく。
誰とでも仲良くなれるように、まずは笑顔でいる努力ををすること、陰口を叩かないこと、時間を守ること、守れない約束はせずにできることをきちんと伝えることなど、人間として必要なことを再度確認しておくべきだ。
こういった情操教育は意外と大事で、後からこれらについても「研修で言ったじゃないか!」と注意しやすくなる。
素直さがない社員ほど苦労させられる存在はいない。「頑固」と「こだわりがある」は、やはり違うのだ。素直に受け止めつつ、そのまま提案という形で返せるようにならないと社内中に敵を作ってしまう。
先天的な部分がもちろん大きいが、新人の間になるべくその辺りを意識させよう。
新入社員への伝え方
目的がまとまったら、新入社員へ伝えることになるが、次の3つがポイントだ。
文章に書き出す
とにかく可視化をすることだ。口頭で言っても流れるだけで意味がない。また、オリエンテーションのパワーポイントの1枚にしてしまうと捨てられてしまう。
別に1枚紙を用意し、できればコーティングして新入社員研修中は常に持っていてもらうべきだ。
常に意識して初めて目的や目標は役に立つ。
目的は絞る
大事なところに絞って、3個以下にするのがいい。目的が多数あっても新人が混乱するからだ。
- 社会人としての礼儀を徹底的に身につけ、現場で受け入れてもらいやすい存在になる
- 基本的な知識を身につけて、どこの部署に行っても会話についていける能力をつける
- 素直に話を聞く力をつける。反論を第一に考えず、まずは受け入れて考えてみる
などだ。新入社員研修期間中の人事ミッションだと言ってもいい。
繰り返し伝える
それだけでなく、何度も繰り返し伝えることが大切で、毎朝研修開始直後に読み合わせをするくらいがちょうどいい。一回読み合わせたくらいで何かが浸透するわけもなく、意識をする訳でもない。
こういう目的を設定しておくと、具体的なので成長が早くなる。そこまで行けていないと焦る。
また、「目的ははじめに伝えましたよね? なぜそこに向かって努力していないのですか?」という叱責などがしやすくなる。
必ず文章化して、繰り返し伝えよう。
まとめ
新入社員研修の目的にういてまとめてきたがいかがだっただろうか?
4つの目的を軸に、あなたの企業の中で必要な目的をまとめて2,3の文章にまとめて、具体的に伝えるのがポイントとなる。
参考にしていただければと思う。