部下や後輩の成長は、指導する立場にある人なら誰でも願うことだろう。
会社の売上アップや業務効率化のためには、部下育成は不可欠である。
しかし、部下育成・後輩指導はとても難しい。
近年は転職が当たり前となり、様々な経験を持った中途入社の社員が増えているため、体系的な指導ではなく、目の前にあることから闇雲に教えていることも多い。
このページでは、効果的に部下育成・後輩指導をするために押さえておくべきポイントについて紹介する。
部下を持つマネージャーや研修担当者、人事担当者は参考にしてほしい。
Contents
部下育成が難しくなっている背景
まずは、部下育成に関連する、世の中の動きを見ておこう。
少子化による人材不足により、ダイバーシティ(人材の多様化)や働き方改革という言葉を耳にすることが増えてきた。
企業も積極的に取り組みを進めており、雇用形態に柔軟性を持たせたり、業務を細分化して効率化を図ったりすることが主流になっている。
そして、人材や働き方が多様化するにつれ、従業員のスキルレベルも多様化してきた。
その結果、社員一人ひとりの現在の知識や能力が、正確に把握しづらくなっている現状がある。
部下育成する側(上司)の意識
思い込みは危険
「これは知っているだろう」「これはできて当然」という思い込みは危険だ。
基本的に、部下は「教えたこと以外知らない」という認識で指導するのが良い。
また、指導前に「知っているか」「教えてもらったか」を部下に確認することから始めると安全だろう。
原因は自分にある
「部下がなかなか仕事を覚えてくれない」と感じることもあるだろう。
そのときは、「自分の教え方が良くないのではないか」と、自身の指導方法を振り返ってほしい。
指導方法が適切でないため部下に意図が伝わらない、というのはよくあることだ。
部下育成は部下の成長段階に合わせる
部下が今知っていることを把握し、その成長段階に合わせて指導することが必要だ。
そのためには、部下に期待する役割を明確にするとよい。
部下の成長は、業種や会社によって異なる。
例えば、新しいプロジェクトメンバーを新入社員から抜擢すれば、大きな成長へと繋がる。
また、飲食店やアパレルなどの店舗では、入社2・3年目で店長になることも珍しくない。
逆に、研究職や建設業では1つの仕事が10年以上の長期にわたる場合もあり、それを終わらせたときに初めて一人前だと認められる。
このように業種や会社によって部下の成長速度は様々だ。
共通しているのは、部下に求める役割が必ずある、ということである。
【例1】入社1年目の社員に求める役割
・ビジネスマナーを身につけてほしい。
・ほうれんそうを徹底できるようになってほしい。
【例2】入社3年目の社員に求める役割
・これからは、業務の課題点に気づいてほしい。
・自分で考え行動し、安定して営業目標を達成してほしい。
このように、まずは部下に求められる役割を明確にし、部下と上司で共通理解をしておくことが重要だ。
部下育成のための目標設定には根拠が必要
目標やノルマを持っている人なら共感できると思うが、あまりにも現実とかけ離れた無茶な目標は、やる気を削ぎ、「どうせ達成できない」というネガティブな意識を持たせてしまう。
目標設定のポイントは、根拠があるかどうかだ。
上司は、部下にその目標が達成できる根拠を示さなければならない。
その根拠を部下と共有することで、お互い納得のいく目標を設定することができるのだ。
その上で、部下の成長段階より少し上のレベルに目標設定するのがよい。
部下育成のための目標は明確なものにする
部下の成長を促すための目標は、なるべく明確な指標にすることをお勧めする。
「コミュニケーション能力を身につける」
「積極的に行動する」
これらの目標は、必要なことではあるが、明確な指標にはなっていない。
「チラシを1日30枚を配る」
「顧客動向を分析し、週に1回、商品陳列案を出す」
このような、具体的な数値や行動に落とし込んで、誰が見ても明確な目標を設定するのがポイントだ。
これなら部下も動きやすく、さらに、上司もフィードバックがしやすい。
部下育成・後輩指導のポイント
仕事の全体像を見せる
部下育成・後輩指導のポイントは、まず仕事の全体像を見せることだ。
それにより、業務量やそれにかかる時間が想像でき、部下は自身の行動計画を立てやすくなる。
「今の仕事がどう発展していくか」を知ることで、仕事に対するモチベーションアップにも繋がるだろう。
具体的な言葉を使う
部下ができないことを指摘する前に、上司の指示方法を見直しておきたい。
指示をする際は、抽象的ではなく具体的な言葉を使うことが必要だ。
特に、「いつまでにやるか」という「締切」の指示は明確にしておきたい。
報告ができない部下には、「○月○日までに××(特定の場所)に書面で提出するように」と、日時・場所・提出方法まで具体的に指示すると効果的である。
部下指導に使える「MORSの法則」
「行動」や「目標」を具体的にする手法として「MORSの法則」というものがある。
MORSとは、以下の4つの条件の頭文字を取った言葉である。
Measured(計測できる=数値化されている)
Observable(観察できる=誰が見てもその行動だとわかる)
Reliable(信頼できる=誰がやっても同じ行動になる)
Specific(明確化されている=誰が何をどうするかが明確である)
この4つを満たしていないと、適切な「行動」「目標」とは言えず、人は指示通りに動いてくれない。
MORSの法則に当てはまらない例
「売り上げを伸ばすために商品知識を増やす」・・・4つの条件には当てはまらない
MORSの法則に当てはまる例
「売り上げを伸ばすために、○○商品を月に○○個販売する」
「商品知識を増やすために、○○商品の他社製品との違いや消費者層を分析する」
このように、行動や目標は具体的なものである必要がある。
これにより、部下は自身の行動が把握でき、上司は「達成できなかった理由はこれができていなかったから。次はここを意識して改善していこう。」と具体的なフィードバックができる。
部下育成を成功に導く経過確認
明確な目標と行動計画が立てられたら、その経過確認が必要だ。
普段、1ヶ月に1回、1時間かけてフィードバックを行っているマネージャーもいるだろう。
それよりも、数分でもいいので、できれば毎日、できなければなるべく短いスパンで、定期的に状況を確認することが望ましい。
もしかしたら、部下はこの先の業務をどう進めていいか迷っているかもしれない。
また、少しずれた方向に業務が進んでいるかもしれない。
短いスパンで定期的に状況を確認することで、問題を早期に把握でき、軌道修正などの指導も迅速に行うことができる。
まとめ
ここ1週間を振り返ってほしい。
部下が何の業務をしていたか、どこまで進んでいるかなど、把握できていただろうか。
また、部下に自分から話しかけたり、部下からの質問に丁寧に答えることはできていただろうか。
部下育成のためには、上司が自らの指導方法を見つめなおし、指導スキルを高めていくことが必要だ。
この機会に、ぜひ部下育成・後輩指導研修を受ける機会を設けてほしい。
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