メンタルヘルスラインケア研修の3つのステップ

ラインケア研修
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近年、会社におけるメンタルヘルス対策が大きな問題となっており、管理監督者には、部下のメンタルヘルス対策ができる「ラインケア」のスキルが求められている。

このページでは、管理監督者向けのメンタルヘルスラインケア研修の3つのステップについてまとめている。
研修担当者だけでなく、部下のメンタルヘルス対策に頭を悩ませている管理監督者も参考にしてほしい。

職場とストレスの関係

心の健康問題は、ストレスとの関わりが深い。

「労働者健康状況調査」(2014年 厚生労働省)によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある」と答えた労働者の割合は、60.9%にまでのぼる。

さらに「労働安全衛生調査」(2013年 厚生労働省)によると、「過去1年間にメンタル不調により連続1ヶ月以上休職または退職した労働者がいる事業所」の割合は、10.0%もあるそうだ。

メンタルヘルス不調とは

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年 厚生労働省)によると、メンタルヘルス不調とは「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう」と定義されている。

メンタルヘルス不調というと精神疾患のことだと考えてしまいがちだが、それだけでなく日常生活や仕事に悪影響を与えてしまうような「心の健康状態の悪化」全般のことを指している。

ラインケア研修の3つのステップ

ラインケアとは、管理監督者が部下のメンタルヘルスをケアすることである。
社内のメンタル不調者を減らすためには、管理監督者がラインケアできるように教育しなければならない。
ここからは、ラインケア研修の3つのステップについて紹介する。

ラインケア研修ステップ1:気づく

ラインケア研修でまず初めに指導したいのが、部下のメンタル不調のサインにいち早く「気づく」ことだ。

職場でのメンタルヘルス不調のサインには、以下のようなものが挙げられる。
・ミスが増える。
・遅刻、早退、欠勤が多くなる。
・挨拶や付き合いを避けるようになる。
・態度が落ち着かずイライラする。
・口数が少なくなる。(または多くなる)
・些細なことで腹を立てたり反抗する。

これらは、気にしなければ「異常」だと感じるものではないだろう。
普段からそのような態度なのか、いつもと少し違うのか、管理監督者はその違いに気を配っておかなければならない。
何かいつもと違うな、と感じる場合は要注意だ。

違和感を感じたら、最近、部下の周りで以下のような変化がおきていないか考えてみる。
・人事異動
・営業成績の低下
・勤務時間の増加
・昇進や昇格

「昇進うつ」「出世うつ」という言葉があるように、一見プラスだと思われる変化でも、そのプレッシャーがストレスになることもあるため注意が必要だ。

ラインケア研修ステップ2:声をかける

ラインケア研修の次のステップは、部下に「声をかけて状況を把握する」ことである。

仕事上での変化が見当たらない場合は、プライベートで何かストレスの原因になるようなことがあるかもしれない。
結婚、出産、引っ越し、親の介護、親族の死など、実際にコミュニケーションを図っていなければわからないことが隠れているケースも多々ある。

声かけは、以下のポイントに注意して行いたい。

声かけのタイミング

多忙な時ではなく、手の空いた時や休み時間など、少しリラックスしているタイミングに声をかける。

声かけの場所

周りに大勢の人がいない場所で声をかける。

評価しながらの声かけ

部下のことを認めて評価しながら声をかける。

(例)最近ミスが目立つようになったAさんに対する声かけ

×「Aさん、最近ミスが多いですね。どうしたんですか?」
これでは、Aさんの中に自分を否定されたイメージが強く焼きついてしまい、心を閉ざしてしまう。

○「Aさん、いつもよく頑張っていますね。ただ最近少しミスがあるようですが、何か仕事のやり方で困っていることはありませんか?」
ちゃんと見ていることを伝えることで、この人になら相談してもいいかなという気持ちの変化に繋がる。

声かけの言葉

部下の本音が出やすいような声かけをする。

部下の態度に違和感を感じると、つい「大丈夫?」と聞いてしまいがちだが、これは望ましくない。
「大丈夫?」と聞かれると、迷惑や心配をかけたくないという思いからつい反射的に「大丈夫です!」と答えてしまうものだ。
もし部下の状態を確認したいなら、「最近疲れているように見えるけど何があったの?」「どんなところで困っているの?」など、「実は・・・」と本音が出やすいように声かけすると良い。

ラインケア研修ステップ3:相談に乗る

ラインケア研修の最後のステップは、部下の「相談に乗る」ことである。

相談に乗る際には、下記のように対応することが必要だ。

部下の気持ちや考えを理解する

上司は部下の状態に関心を持ち、心を傾けて話を聴くことが必要だ。
これは「傾聴」と呼ばれ、メンタルヘルスカウンセリングの現場でよく用いられるスキルである。
自分の価値観や固定概念に捕らわれることなく、相談者の気持ちや考えをそのまま受け止めたい。

解決策を導き出して納得させる

相談を受けたら、何かしらの解決策を導き出して終わらせるようにしたい。
また、その結論が正しいものだということ部下とともに確認し、お互いの同意を得ておくことも必要だ。
ただ一度の相談で全てを解決するのは難しいため、緊急の場合を除いて、適切な時間(1時間程度)で一旦の結論を出して区切り、日時を改めて相談に乗るという工夫も必要である。

自分には対応できない問題の場合

ラインケア研修では、部下が重度のメンタル不調や精神疾患の疑いが見られた場合、無理に自分で対応するのは極めて危険であるということを指導しておきたい。

ラインケアにおける管理監督者の役割の一つは、産業保健スタッフや専門医へバトンをつなぐことだ。
相談者だけでなく、管理監督者自身、ひいては会社を守るためにも、自分には対応できない問題だと感じた場合は、躊躇せず、専門家との連携を視野に入れてラインケアの取り組みを進めることが重要である。

まとめ

ここまで、管理監督者向けのメンタルヘルスラインケア研修の3つのステップについてまとめてきた。

ラインケアで管理監督者に心がけてほしいのは、部下とのコミュニケーションである。
日々のコミュニケーションで部下のメンタル不調に気付き、適切に声をかけ、親身になって相談に乗ることが必要だ。

ラインケアスキルのある管理監督者が一人でも多く増えるよう、ラインケア研修を積極的に取り入れてほしい。

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